エシカルケータイキャンペーン > ニュース一覧 > WE21ジャパンのメールニュースに寄稿しました(FoE Japan、A SEED JAPAN)
特定非営利活動法人WE21ジャパンのメールニュース「WE スマイル・ネット Vol.73(2012年5月9日号)」にFoE Japan 波多江、A SEED JAPAN 加治が寄稿しました。
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( 1 ) フィリピンのニッケル開発現場と私たちの生活のつながりを考える
(国際環境NGO FoE Japan委託研究員 波多江秀枝)
( 2 ) 鉱物資源の採掘現場で起こっている問題と世界の動き
(国際青年環境NGO A SEED JAPAN 加治知恵)
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( 1 )フィリピンのニッケル開発現場と私たちの生活のつながりを考える
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私たちの身近にある50円玉や100円玉、携帯電話、そして数々のステンレス製品――これらの原材料として欠かせないレアメタル「ニッケル」を私たちはフィリピンなど海外から輸入しています。
すでに30年以上も日本のニッケル供給元となってきたのは、フィリピンのパラワン州バタラサ町リオツバ村。1977年以来、太平洋金属がニッケル鉱山開発を手がけ、ニッケル鉱を日本に輸出してきました。また、2005年には、住友金属鉱山、三井物産、双日が90%出資するコーラルベイ・ニッケル社(CBNC)が同村で、製錬事業を開始。ニッケル製錬の中間品を20年間、愛媛県の住友金属鉱山ニッケル工場へ輸出する計画となっています。
この日本とつながりの深いニッケル開発現場の周辺に暮らす先住民族を含む地元住民らは、これまで、ニッケル開発による様々な環境社会影響に懸念を抱いてきました。2009年1月にFoE Japanがニッケル開発現場周辺の村々で、計133世帯に聞き取りを行なったところ、85%が製錬所の操業後の咳や頭痛の慢性化、皮膚病の症状など、健康の悪化を訴えました。また、鉱山や製錬所の排水が流れ込む湾内での魚類・貝類の減少等が漁民から報告され、生態系への影響も懸念されています。
FoE Japanは2009年7月から、こうした健康悪化等の原因特定の試みの一つとして、専門家の協力を得てニッケル開発現場周辺の飲料水、河川水の水質分析を継続的に実施。これまでに河川水から日本の公共用水域の「人の健康の保護に関する環境基準」を超える6価クロムが検出されるなど、重金属による広範囲な水質汚染の可能性が示唆されました。6価クロムは、発がん性、肝臓障害、皮膚疾患等も指摘される毒性の高い重金属です。
日本企業はこうした状況に対し、鉱山や製錬の工程に起因する6価クロム等の河川への排出を認めたものの、「フィリピンの排水基準を満たしている」との認識を示しており、事業者による汚染源の特定はなされていません。また、事業者がNGOの鉱山・製錬所への立入り調査を拒んでおり、NGOによる汚染源の特定にも至っていない現状があります。
同河川が流れ込む海域にはコミュニティーがあり、漁業等を営む住民もいます。今後の地元住民の健康被害の未然防止と安全のためにも、汚染源の解明や情報公開など、日本関係者はより積極的な対応をとっていくべきです。また、こうした問題は、ニッケルから加工されるステンレス等の恩恵を受けてきた日本の市民として、取り組んでいかなくてはならない課題でもあります。
国際環境NGO FoE Japan委託研究員 波多江秀枝
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( 2 )鉱物資源の採掘現場で起こっている問題と世界の動き
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携帯電話、ゲーム機、テレビ、家電…私たちが毎日使う製品の多くに、様々な金属が使われています。日本はそのほとんどを輸入に頼っていますが、鉱物資源の採掘現場で起こっている問題については、ほとんど知られていないといってよいでしょう。
鉱物資源は、土の中に局所的にしか存在せず、密度も高くないため、鉱脈が見つかれば強制的に大規模な開発が行われることが多く、貴重な生態系が被害を受けたり、長く住んでいる先住民や居住者が土地を奪われたりすることが多くあります。
また、巨大な利権を伴い、武装勢力の資金源となる「紛争鉱物」となるという問題も起きています。そのような鉱山では、強制労働や児童労働による危険な環境での採掘が行われるなどの人権侵害も多く発生しています。
A SEED JAPANでは、採掘問題の認知を広め、製品を通じて採掘問題を解決することを目指して、FoE Japan、アムネスティ・インターナショナル日本などと共に、2010年7月にエシカルケータイキャンペーンを開始しました。
このキャンペーンでは、上記のような問題に配慮して採掘された鉱物を使った製品を「エシカル」と考え、エシカルな製品を企業に求める市民の賛同を募っています。
また、キャンペーン開始とほぼ同時期に、電子電機をはじめとする金属使用メーカーに非常に大きなインパクトを与える法律(金融規制改革法あるいはドッド・フランク法)が米国で成立しました。その中に「紛争鉱物」に関する条項があり、タンタル、金、スズ、タングステンを紛争鉱物とし、コンゴ民主共和国およびその周辺国が紛争鉱物の原産国となっているか否かの情報開示を義務づけているのです。
A SEED JAPANでは、2010年、2011年とメーカー等に対して鉱物・金属調達に関する公開質問状を送付し、その結果を開示してきました。その結果を見ても、2011年は多くの企業が何らかの活動を始めている、もしくは始めようとしている段階と言え、「紛争鉱物」問題については法制化の影響により非常に早いスピードで動いていることが伺えます。また、逆にいえば取組みは「紛争鉱物」に限定したものが多く、法律対応にとどまっている部分があります。
しかし、食品や生物資源の分野で原料採取の際の責任やトレーサビリティが求められるようになってきているように、原料調達段階での環境・社会配慮は今後もますます必要になるものであり、鉱物資源にもその段階が訪れたと言えます。
現状は、法律の影響で企業の取組みが先行している面がありますが、エシカルケータイキャンペーンを通して市民に採掘現場で起きている問題を訴えるとともに、企業に配慮を求めることで、法律対応に終わらせず、より本質的な採掘問題の解決につなげることが可能だと考えています。
ぜひ皆さんも、身近な金属がどのように採掘され、私たちの手元に届いているのか考えてみてください。
国際青年環境NGO A SEED JAPAN 加治知恵
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